事故
2003年08月03日
―対策はできるだけシンプルに!かつ、誰もが守れる、守りやすいものを!―(1) 問題点の洗い出しが終わったら、次は問題点の解決方法すなわち再発防止対策を作り上げなければならない。大切なことは、関係者が現地に集まって時間をかけ徹底的に議論すること、皆の共通認識を確立すること、各セクション間相互の信頼感を醸成することであろう。
(2) 「事故はあってはならないもの」という考え方から「事故はあり得るもの」いう考え方に、また「ミスを犯すのは、人間がたるんでいるからだ」という考え方から「人間はどんなに優秀な人でも間違いを起こすもの」いう考え方にするのが、今各企業が盛んに取り入れている「リスクアセスメント」である。それぞれの事故(事象)について、「発生の可能性」と「発生した場合の影響度」をマトリックス(点数化等)に表し、その重要度の高いものから実施していくという手法がとられている。ハード(設備面)で対応できるものは極力対策を講じ、それでもリスク排除できない部分のみを「人間の注意力に頼る」ようにするという考え方である。
「予算がない」という理由だけで、設備的な改善は後回しにしたり、「意気込みがあれば事故は起こらないものだ!」と責任を当事者になすり付けるようなことがあってはならない。
(3) 対策は、シンプルでかつ現場で作業する人が、守れる=守りやすいものでなければならない。「ルールを守らなかった」ということが原因であったとしても、ルールそのものが守りづらいものであったり、環境の変化等で風化してしまっていたりすることもあり得る。
「なぜルールを守らないか?」について、立教大学芳賀教授は次の点を挙げる。
① ルールを理解していない。(なぜそうしなければならないかを理解していない)
② ルールに納得できない。(ルールが厳しすぎる、作業の邪魔になる)
③ みんなも守っていない。
④ 違反のリスクが少ない。(守らなくても注意されない、罰せられない)
⑤ 違反する(守らない方)がメリットが大きい。
事故が発生するたびに、過去に出した通達・事務連絡をすべて守らせ、その上にさらに今回考えた対策を上積みするというやり方は、とても現場で実行されるとは思えない。「あれもこれも!」ではなく、最も重要な「あれとこれを!」という対策でなければ、たとえ事故発生直後だけ守れたとしても、決して長続きはしない。
(4) 時代は大きく変わってきている。去年良かったことが、今年はそのままでは良くないことがある。今までうまく行っていたことが、今後もうまく行くとは限らない! ともすれば、事故防止対策は、「こうでなければならない!」といったある固定観念的な考えで立ててきたことが多かったと思われるが、この変化に合った柔軟な対応が求められるのではないだろうか。
2003年08月02日
― 情報を正しく、分かりやすく現場等にどう伝え、その対策をいかに実行させるか?―
(1) 最後に皆で決めた対策をいかに実行するか?であるが、これがなかなか難しい。ある会社の幹部から、「対策は愚直に、地道に、徹底的に!」ということを聞いたことがあるが、まさにそのとおりであり、対策が定着するまでしつこいくらいにやらないと徹底できないものである。もちろん現場でこれらの対策が実施されているかどうかの確認も怠ってはならない。
(2) 事故再発防止に「他山の石」という言葉が良く使われる。他箇所で起こった事例を自分の職場に当てはめて、「同じような事象はないか?」「自分たちならこうする」ということを一緒に考えるというものである。そのためには、いかに分かりやすく伝えるか?が大切である。しかし一般的には、「このようなことがあったから注意するように!」というだけで、あまり事故の本質が伝わらないことが多い。
かなり前のことであるが、「事故防止会議といえば、“またか?”と気が滅入りますよ! 資料は文字ばかりが並んでいて事故の内容も理解しづらく、事故原因の本質などはとても分かるはずがありません。あげくの果ての結論は、“ルールどおりしっかりやれ!”で終わりですからね。」という声を聞いたことがあった。このためパソコンとプロジェクターを両肩にぶら下げて各現場を回り、写真等を多く取り入れたパワーポイントを使って直接現場社員に事故例を説明したところ、会議終了後出席者の一人が、「事故の内容や原因なども分かりやすかったですよ!これからは事故防止について、前向きに捉えられるような気持になりました!」と言ってくれ、大変嬉しく思ったことがある。
(3) 個々人に合った指導方法や言葉を用いて行うこと。統計的に見ても、新人の起こす事故と、ベテランが起こす事故の件数はあまり変わりがない、といわれている。新人は知識や経験が十分でないため、キチンと指導すれば良いのだが、ベテランを指導するのはもっと厄介である。自分は○十年のベテランだという「自負心」、ルールどおりにやらないいわゆる「横着・過信・独断作業」等、しかしこれを見て見ぬ振りするのが最も良くない。「指示に従わない者はその現場から退場をさせる」くらいの強い信念で望まなければ、事故防止が図れる訳が無い。
(4) 「事故は起こさないぞ!」という、現場社員からの沸き上がるような事故防止活動であって欲しいものである。現場での指導・教育方針は①「分かる(理解する)」②「出来る(能力はある)」だけでは十分でなく③「やる(実行する)」ことが最も重要である。正にこの「実行する」ことが大事であって、それも人から言われてではなく「自ら進んで」でなければならない。
前述の事故について当該現場の社員が、「あの事故の後、事故以外のことも含めて職場で皆がいろいろ意見を出し合い、『ああしたらどうか、こうした方が良い・・・』と十分話し合いました。ご迷惑をおかけしましたが、これからは我々に任せて下さい、もう二度とこのような事故は起こしませんから!」という力強い言葉を聞くことができ、大変頼もしい限りであった。
2003年08月01日
・ISO9000(品質マネジメント) ISO14000(環境マネジメント)はよく知られているが、この労働安全衛生マネジメントシステム(OHSAS18001)を各企業取り組むように!と労働省あたりから盛んに要請があった。このシステムを導入することにより、
(1)組織全体の労働災害防止の仕組みを構築する。
(2)事故の減少・防止を図る。
(3)健康増進等を進めてゆくというもので企業イメージのアップ、労働災害によるロスを削減し健全な企業経営を支えるというものである。
・この講習会にも参加、「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」や他のマネジメントシステムを参考に、原案作成に取り掛かったが、現場などからの抵抗が強い。
・それは、各システムが、パソコンを使って記録を必ず残さざるを得ず、今でも現場監督だけでも非常に忙しく、現場から帰って夜のこの処理をしなければならない。それに加えて「今度はさらに労働安全システムもですか?」との声が高い。
・確かに、今はパソコンを使って記録等をきれいに整理できる管理者の方が、現場監督をしっかりやってもパソコン処理ができない管理者より優れている!という偏った考えはないにしても、そのような雰囲気があることも事実。これでは本末転倒、現場実地をきっちり把握したうえでのパソコン整理であろう。しかし、年配の所長さんたちは、パソコンがそれほど得意でないことは事実、大変である。
・こんな声の中で、いかにシステムを軽くするかが最大の命題、出来上がったものは、かなり軽くしたつもりでも、新しいシステムが付加されることは間違いなく、現場の負担がある程度増えることは勘弁してもらわなくてはならない。しかし本店から押し付けられた!というのではこのシステムがうまく運用されるはずがなく。本来の趣旨・目的を理解して、事故防止のため、ひいては会社経営の一翼を担うことを理解したうえで活用してほしいものであり、我々もまたパソコン、パワーポイントを駆使して各支店や現場への浸透を図った。
・やはり安全部の仕事は、本社で机に張り付いているのではなく、現場をくまなく回り現場実態を把握すること、そして現場の皆さんの生の声を聞くこと、すなわち「三現主義」(現場・現物・現実)が最も重要であることを実感する。
2003年07月30日
今年もまた新入社員を迎える季節がやってきた。毎年この時期は、研修センターに活気がみなぎり、一年のうちで最も『輝く』ときである。新入社員のはつらつとした大きな声が、教室や、グランドから満ち溢れている。「ビジネスマナー」の授業では、『ハイ、オアシス』と呼ばれる訓練が行われる。4~5名が1チームとなり、「はい」「おはようございます」「ありがとうございました」「失礼しました」「すみませんでした」を練習の後、皆の前で発表する。講師は大変厳しく、声の出し方、お辞儀のし方、顔の表情などを採点し、合格するまで何回でもやり直しをさせられる。どの研修生も真剣そのもので、講師からようやく「合格!」と言われると、「やった!」と歓喜の声が上がる。研修期間中の廊下や寮での大きな挨拶は、実に気持ちが良い。約1ヶ月半の研修を受け、駅等各職場に配属されて行くが、各駅では、新入社員の元気な声とすがすがしさに、お客さまからも声援が送られる。『サービスの基本』である。
技能講習中の見習運転士。指先をしっかり伸ばし、客室に聞こえるくらい大きな声で信号確認などの「指差喚呼」を行っている。お客さまもこの運転士の動作を見て、頼もしそうに見守っている。『安全を守る原点』である。
しかしながら、この元気の良い大きな声での、挨拶も指差喚呼も、徐々にトーンダウン、振り返り研修に帰ってきて時は、「あのときの元気さはどこへ行ってしまったの?」と思うくらい、声の出ない社員が少なくない。
「職場に行ったら、一部の先輩が大きな声を出していないから」という社員もいた。しかしそれだけだろうか。「人(講師)から言われたから」「人が見ているから」やっていたという気持ちは無かったか。
ある駅で、新入社員を対象とした“my opinion”の発表会が行われた。「研修センターで教えられたとおり『大きな声で挨拶』しても、職場ではなかなか返事が返してもらえませんでした。それでも、何回も何回も挨拶しているうちに、次第に返事をしてもらえるようになりました。」と。先輩や同僚の心を開かせ、職場の雰囲気まで変えた、新入社員のけなげなまでの奮闘振りである。
研修センターにおける集合研修や職場内教育(OJT)で身に付けた知識・技能を、『分かる(理解する)』、『できる(力はある)』だけで終わらせることなく、いかに現場で『やる(実行する)』に結びつけるか。それが、たとえ「人に言われなくても」「誰も見ていなくても」自ら実行する、自律心を持った社員でなければならない。
当社は、この10年間に約半分の社員が、現場第一線から離れていくという、急激かつ大幅な「世代交代期」にあり、業務知識や技術の継承をいかにスムーズに行うかが重要な課題です。


